日本:自民党が政権を維持、過半数が腐敗した体制に不満

Image: 外務省, Wikimedia Commons

10 月 31 日、日本の有権者の 55.93%が新政権樹立のための選挙に投票した。自民党が大変な 不人気に苦しんでいるこの現状を野党は何ら有利に働かすことはできなかった。この結果は、日 本の大衆が、どの政党も資本主義の危機と併せて悲惨な現状にあると見ていることを再確認させ ることとなった。 

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実行可能な代替案はない

今回の選挙は、菅義偉前首相が支持率低下で辞任した直後に行われた。自民党は党首選を行 い、岸田文雄氏を党首に据えた。岸田氏は宏池会系の野心家で、一般有権者だけでなく、自民 党内でも不人気である。岸田氏が党首選に勝てたのは、一般党員よりはるかに重みのある派閥幹 部からの支持を得たからに他ならない。 そして、岸田新内閣は、党首交代からわずか数週間後の 10 月 31 日に解散総選挙を行うことを決 定した。自民党の支持率がさらに低下する前に、この急転直下で政権を維持しようと考えたのであ る。 この作戦は自民党に有利に働いた。自民党は 15 議席を失ったものの、公明党(3 議席増)と共に 単独で過半数を維持した。一方、野党連合を構成する立憲民主党と日本共産党は、ともに議席を 増やすどころか減らした。 この結果は、日本の大衆が自民党に信頼を寄せていることを示すものでは決してない。そもそも、 日本の有権者の 3 分の 2 以上が選挙に行かなかったからである。しかし、選挙前の数週間、巨大 な不満のムードが野党連合への支持に流れている気配はなかった。というのも、これらの野党勢 力も決して現政権にとって変わる存在とは認識されていなかったからである。

不人気な野党連合

この選挙を前に、ブルジョアリベラル派の立憲民主党を中心とする野党は、日本で 2 番目に人口 の多い横浜市の市長選挙で勢いづいた。日本共産党、社会民主党との共同候補が、高い得票率 で自民党を破ったのである。この選挙は、菅政権に対する不信任決議案とみなされ、菅首相が辞 任する一因となった。野党は、この成功が全国的な舞台で再現されることを期待した。 期待とは裏腹に、リベラル派野党連合は総選挙で屈辱的な敗北を喫した。この連合は、9 月に締 結された共同政策協定を中心に、日本共産党、立憲民主党、社民党、および小政党であるれい わ新選組で構成されている。後者 2 党については弱小政党のため、実質この連合は立憲民主党 と日本共産党の間の統一戦線である。 日本共産党は、スターリン主義に忠実に、立憲民主党と「統一戦線」において、意欲的で熱心な ジュニアパートナーとして活動した。両者は、289 の小選挙区のうち 213、つまり 70%以上の選挙 区で、それぞれの政党に所属したまま共同候補を擁立することで合意した。これは、日本共産党 が、ブルジョアリベラルの綱領と展望とともに、立憲民主党の候補者を全面的に支持することを意 味する。 立憲民主党の政策提言は、自民党のそれとほとんど区別がつかない。たとえば、経済の問題では、 立憲民主党は公共支出を拡大し、中間所得層を支援するために「富裕層に課税する」ことを要求 している。問題は、岸田自民党の綱領も、公共支出を拡大し、"新しい形の資本主義で分厚い中 間所得層を再建する "と言っていることだ。 さらに重要なことは、日本の大衆が、今回の選挙に対する熱意の欠如に見られるように、自民党と 立憲民主党の間に意味のある違いがないことを、すでに見抜いていたことである。日本共産党は、 このようなブルジョア的要素から階級的独立性を維持する代わりに、後者に肩入れし、したがって、 大衆から代替案として見られる機会を失ってしまったのである。 結局、立憲民主党は、110 議席から 96 議席へと 14 議席を失うことになった。日本共産党は 12 議 席から 10 議席になった。 立憲民主党の党首 枝野幸男は面目を失って辞任した。日本共産党の支持者の大半(82%)は 党の命令に従って、選挙区で合意された立憲民主党の候補者に投票したが、立憲民主党の支持 者の 46%だけが選挙区の共同候補者が日本共産党から来たときに同じことをしたという事実にも かかわらず、立憲民主党の多くの党員はこの選挙結果について日本共産党に責任を負わせるこ とにした。リベラル派は今後、自らを共産主義者と称する政党を、彼らがどんなに熱心に便宜を図 ろうとも完全に信用することはないだろう。 日本共産党の人民戦線主義の失敗は、世界史におけるこの破綻した戦略の長く不愉快な失敗の リストに加えられるに過ぎない。真の共産党なら、自民党に対し、あるいはコロナパンデミックからも 自民党の数十年の支配からも多大な利益を得ている資本家階級への階級闘争を呼びかけるは ずであろう。

空白を埋める

リベラルな野党が失敗し、労働者階級の代替案がないため、日本では政治的空白が生まれた。こ れを利用したのが新たな右翼政党であった。 日本維新の会は議席を 10 議席から 41 議席に伸ばし、公明党を抜いて国会で第三党となった。 自民党や公明党とは連立を組んでいないが、維新もまた、大阪府を中心に強い基盤を持つ右派 保守政党である。維新は「小さな政府」と「無駄な支出の削減」を重視しており、原則的に緊縮財 政に反対しない自民党政権が、日本資本主義の巨大な矛盾を緩和するために政府支出を増やさ ざるを得なかったのに対して、維新は「小さな政府」と「無駄な支出の削減」を重視している。 今年、維新は、現職の大阪府知事である吉村洋文氏の若々しいイメージとソーシャルメディア上 の人気を活用し、大阪の選挙区で自民党の主要な挑戦者として席巻することができた。隣の兵庫 県でも、維新は比例代表選挙で自民党を犠牲にして大復活を遂げた。 中央大学名誉教授のスティーブン・リード氏は、日本共産党の候補者が立憲民主党との共同候補 として立候補していた場所で、日本共産党を拒否するために維新を選択した有権者が多かったの ではないかと推測している。 理由はともかく、維新は自民党政権に右から対抗する重要な存在となった。維新は、労働者階級 に代償を払わせながら、自民党の既存の綱領の最も反動的(保守的)な面を加速させるよう、自民 党を追い込んでいくだろう。

岸田は危機を脱していない

不人気な岸田文雄にとって、今回の選挙の目標は、議席を獲得することではなく、損失を最小限 に抑えることであった。その敗戦の度合いによって、総理大臣としての任期が決まるからだ。15 議 席を失い、自民党の過半数を維持できたことで、岸田は安堵のため息をついたことだろう。 しかし、この選挙は決して、過去 10 年間に存在した日本の政治的安定を回復するものではない。 パンデミックはまだ終わっておらず、経済は絶望的に停滞している。岸田氏は現在、状況を鎮める ために拡大した景気刺激策を推進しなければならないが、それは過去数十年間に日本が負った 巨額の負債をさらに増やすだけである。同時に、自民党に「公共支出を抑えろ」と圧力をかけてく る日本維新の会とも戦わなければならない。 党内では、岸田氏の立場は依然として微妙である。前述したように、彼は高齢の党幹部たちの支 持のもとに党首の座を獲得した。今回の選挙では、自民党の老舗の大物たちが、長年にわたって 支配してきた選挙区で議席を失っている。甘利明自民党幹事長もその一人で、党のポストも辞め なければならない。旧来の党幹部が弱体化すれば、党内の陰謀や分裂の余地はさらに広がり、岸 田氏もそれに対処しなければならない。 なによりも、自民党は、日本資本主義の危機とそれに伴う階級闘争の解明を遅らせる力がないの である。岸田氏の任期は、政治の現状が崩れるにつれて、菅氏よりもさらに険しいものになるだろ う。

上記のどれにも該当しないに投票

上記の政党はいずれも、日本の労働者階級の決定的な部分の支持を得ていないことを忘れては ならない。結局、有権者の 3 分の 2 は、投票に行かなかったことで、どの政党にも支持を表明して いない。これは、「無党派層」が「最も人気のある政党」であり続けるという傾向を表している。 このような政治的無関心の理由は、日本の労働者階級の人々には明らかである。神奈川県に住 む 25 歳の会社員、佐藤隆太郎は、選挙権年齢になってから一度も投票に行かなかった理由を ジャパンタイムズにこう説明している。 「与党の自民党が勝つだろうし、強い野党もない。しかも、打ち出される政策が自分に大きな影響 を与えるとは思えない」。 佐藤の言うとおりだ。自民党は何十年もの間、支配階級とアメリカ帝国主義の支持によって政権を 維持し、日本共産党を含む「野党」勢力は、日本の大衆に何ら具体的な提供をしないまま、際限 のない国会での議論に埋没している。 この無関心そのものが重要である。世界第 3 位の経済大国で、ブルジョア民主主義の正統性が 大衆の間で急速に損なわれつつあるのである。今のところ、国会に参加するすべての政党は、体 裁を保つことができると考えているかもしれないが、日本の危機がさらに深まるにつれて、階級闘 争の高まりは、既成概念を根こそぎ破壊したいという大衆の熱い願望を明らかにすることになる。 日本の労働者と若者は、この腐敗した社会から純粋に解放される思想を熱心に求めるようになる だろう。この時代においてこそ、日本でマルクス主義的傾向を構築する必要がある。私たちと一緒 にこの仕事に参加しよう!

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